1. 心不全と心アミロイドーシスとの
関連について※
心アミロイドーシスは、心臓の組織にアミロイドが沈着することによって生じる心筋症であり、心不全や突然死の原因となる疾患です(図1)。一方で、最近は、特に高齢の心不全患者にアミロイドの沈着が隠れている可能性が指摘されています。心臓にアミロイドが沈着していても無症候性の場合もあり、すべてが治療対象になるわけではありませんが、近年、心アミロイドーシスをともなうATTRアミロイドーシスが増加傾向にあることが報告されています(ATTRアミロイドーシスについては、「4.心アミロイドーシスの病型分類について」をご参照ください)10)。心アミロイドーシスが原因となる心不全の症状としては、アミロイドが心臓の刺激電動系に沈着しておこる不整脈の一つである徐脈(脈が遅くなる)による失神やふらつきなどは、他の心不全ではあまりみられない特徴的な症状です。
心アミロイドーシスは全身性のアミロイドーシスの部分症なので、心臓以外のいろいろな臓器や部位にアミロイドがたまります。とくに神経や腱はたまりやすく、手根管症候群や脊柱管狭窄症の原因となっていることもあります。そのため、既往歴として手根管症候群や脊柱管狭窄症をもつ心不全患者さんは心アミロイドーシスを疑う大きな要因になります。
※さまざまな病気が原因で心不全になります。そのなかでアミロイドが沈着している心不全が心アミロイドーシスです。
10)Yamada T, et al. ESC Heart Fail. 2020;7(5):2829-2837.
図1< 心臓におけるアミロイドの沈着 >
(慶應義塾大学.KOMPAS―心アミロイドーシス.
2016[https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000649.html]より作成)