7. 心アミロイドーシスの検査と
診断の進め方について
心臓の肥大があり、急速に心不全が進行するような場合や、心不全患者さんに手根管症候群の既往がある場合には、心アミロイドーシスが疑われます。
心アミロイドーシスの検査を進めるにあたり、画像検査では心電図検査と心エコー検査が重要です。心電図では低電位という特徴的な波形がみられます。また、心エコーでみると、心室の壁が厚くなっている様子がみられます。通常、心電図で電位が低ければ壁は薄いはずなのですが、電位が低いにもかかわらず、壁が厚いというミスマッチが認められたら、アミロイドの沈着が疑われます。
血液検査としては、BNP が100pg/mL 以上、NT-proBNP が400pg/mL 以上であるという心不全を疑う数値がみられた場合、さらに高感度トロポニンという心筋の障害を見つける検査が心アミロイドーシスの診断に役立ちます。高感度トロポニン検査の高値は、急性心筋梗塞の際に心筋の壊死により一時的にみられますが、高い値がずっと続いているような心不全では、心アミロイドーシスが疑われます。最終的には、ピロリン酸シンチグラフィという核医学検査、心臓MRI や心臓の心筋の一部を採ってくる生検によって確定診断がなされます。腎機能障害を合併している患者さんは造影剤が使えない場合がるので、その場合は、腹壁の脂肪の一部を採取してアミロイドの存在を確かめることで診断がつく可能性もあります(図6)。
心アミロイドーシスの治療が奏効するかどうかの最大の要因は病状の進行度合なので、早期に心アミロイドーシスを発見し、早期から治療を始めることが大事です。
図6< 心アミロイドーシスの検査と診断の進め方 >
(鍋田 健.循環器ジャーナル. 2020;68(1):85より作成)●【手根管症候群とは】
手根管症候群とは、指先の感覚や手の運動において重要な役割をする正中神経が障害される病気です。症状としては、両手の親指、人差し指、中指、薬指の中指側にしびれや痛みがあらわれます。手首には“手根管”と呼ばれるトンネル状の形態を示す部分があり、このトンネル内には正中神経や腱などが通っており、「アミロイド」がこのトンネルにたまり、正中神経を圧迫することが原因の一つになります。
●【低電位とは】
心電図検査での波形の高さが低い状態を意味します。心臓の電気的興奮が弱いか、皮膚の表面に電気的興奮が伝わりにくいことが原因で起こります。心アミロイドーシスの特徴的検査所見の一つです。
●【高感度トロポニン検査とは】
血液から採取した検体により、急性心筋梗塞の早期診断のバイオマーカーと一つとして知られていますが、それ以外にも急性心不全、慢性心不全、心アミロイドーシス、肥大型心筋症、心筋炎などでも検査値が上昇し、診断に役立てられることが検討されています。
●【ピロリン酸シンチグラフィとは】
「RI 検査」と言われる検査法の一つで、血液の中に入れられた「くすり」にあらかじめ“ 目印” をつけておいて、「くすり」が体の中を移動する様子や集積する部位を、体外からその“ 目印” を測定して調べる検査法です。その“ 目印” の役目をするのが、ガンマ線を出す放射性同位元素(RI、ラジオアイソトープ)です。「くすり:この場合はピロリン酸を用います」を静脈注射したあと、このガンマ線を体外からキャッチします。アミロイドが沈着する心臓の部位に一致して、ピロリン酸が集積します。