1.心不全の診断や重症度の評価に
必要な検査について
心不全の診断や重症度を知るためには、患者さんの症状や身体所見を診ること、血液検査、画像検査など複数の検査が必要です(図1)
図1<心不全の検査のフローチャート>
(猪又孝元(編).ザ・マニュアル 心不全のセット検査.東京;メジカルビュー社:2019より引用)- 代表的な検査法を下記に挙げます。
- 1胸部レントゲン
- 肺うっ血や胸水があるかどうかがわかります。
- 2心電図
- 心不全の原因となる心肥大がわかります。さらに、運動負荷をしてからの心電図では、虚血性心疾患の有無もわかります。
- 3心エコー
- 心臓の動きや血液の流れを画像でみることができます。心不全によるうっ血と低心拍出を知ることができます。心臓の各部屋が大きくなっていないか、心臓の動きの状態、心臓の弁が狭くなっていないか、逆流を起こしていないかなどを評価します。
- 4心臓カテーテル検査
- 血管からカテーテルを心臓に挿入して心臓の中の圧を測り、心臓の働きを調べます。心臓がポンプとしてどれくらいの血液を送り出しているかがわかります。また、冠動脈の状態も把握できます。
- 5血液検査
- 静脈血の採血で、心不全かどうかの予測と治療の効果を判定することができます。
●BNPまたはNT-proBNP検査注2)
BNP(ビーエヌピー)とは、心臓を守るため心臓(特に心室)から分泌されるホルモンですが、心臓の機能が低下して心臓への負担が大きいほど多く分泌され数値が高くなります。血液中のBNP が100pg/mL 以上、NT-proBNP では400pg/mL 以上が心不全の診断の基準値になります(図2)。逆にBNP が100pg/mL 未満なら心不全ではないと判断できるところが強みです。
ただし、BNP は肥満や腎機能などによって値が影響を受けるため、高いからといって必ずしも心不全と診断することはできません。BNP 値が高い場合、ほかの画像検査を組み合わせて、心不全の診断を行います。
また、心不全患者さんにおいては、BNP が200mg/mL 未満であれば、現在の治療・管理がほぼ順調と考えてよい目安になります。
注2)BNPとNT-proBNPの違い9)
BNPに比べると、NT-proBNP は心不全の際、上昇する比率が大きいとされています。よって、NT-proBNP のほうがBNPよりも心不全の重症度や病態を鋭敏に反映するといわれていま す。ただし、NT-proBNPは腎機能の低下とともに上昇してしまいますので、腎機能が悪い患者さんは注意が必要です。そのため、患者さんの状態に合わせてどちらか一方のみを測定します。
9)p.1-5.田宮栄治,他.ドクターサロン.2019;63.
図2<心不全診断における
BNP・NT-Pro BNPの基準値>
(猪又孝元.心不全管理をアートする―脚本はどう作るのか. 東京;メジカルビュー社:2017/日本心不全学会ガイドライン委員会. 血中BNPやNT-proBNP値を用いた心不全診療の留意点について.2016[http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/bnp201300403.html]より作成)
そのほか、心臓MRI 検査、心臓CT 検査、心臓核医学検査などがあります。
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