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心不全の症状について教えてください。

労作時の息切れ、動悸、脱力感、易疲労感、夜間の呼吸困難、体重増加、下腿・大腿の浮腫、腹部膨満感、食思不振、便秘、悪心・嘔吐、夜間多尿、チアノーゼ・四肢冷感、睡眠障害、意識障害などがあります。ただし、これらの症状はいずれの患者でも等しく認められるものではなく、自覚していないことも多いので注意が必要です4)

4)p.17.日本循環器学会.急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版).東京;日本循環器学会:2018. [https://www.j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2017_tsutsui_h.pdf]

心不全の原因疾患としては、どのような病気がありますか。

高血圧や糖尿病などは心不全を起こす原因疾患と考えられています。それ以外に、心臓弁膜症、心臓の筋肉自体に異常のある拡張型心筋症や肥大型心筋症、心臓のポンプ機能に影響を及ぼす狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患などがあります5)

5)p.12.日本循環器学会.急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版).東京;日本循環器学会:2018. [https://www.j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2017_tsutsui_h.pdf]

ホルター心電図はどのような検査で、
何がわかるのでしょうか。

ホルター心電図検査では携帯用の小型心電計を用いて、長時間(24時間)にわたり心電図を記録します。胸部に数ヶ所シール状の電極を貼り、心臓の動きを心電計に記録します。10分ほどで検査機器の装着は完了します。検査開始から24時間、眠るときも含めて装置をつけ続けて測定を行います。
・日常生活のなかで不整脈や心筋の虚血が起きていないか。
・動悸や胸痛などの自覚症状が心臓に起因しているか。
・最大心拍数、最小心拍数
・不整脈の種類とその発生頻度および発生時間
などを知ることができます。

BNPやNT-proBNPとはどのような検査で
何がわかるのでしょうか。

BNPは心臓の心室で作られ、ただちに血中に分泌されます。そして、BNPは心室への負荷の程度を鋭敏に反映する マーカーとなるため、心不全の診断に有用な血液検査です。
ちなみに、BNPやNT-proBNPの値は、加齢、腎機能低下、全身炎症などで高値となり、肥満などで低値となります。NT-proBNP検査は月1回のみ保険償還されます。

どのくらい悪くなると
入院しなければならなくなりますか。

坂道や荷物をたくさん持ったときに息苦しくなるようでしたら、一度、専門医を受診してください。
仰向けになって寝ていると息苦しく眠れなく、体を起こすと症状が和らぐようだと起坐呼吸の症状が出ていますので、入院の可能性が出てきます。

心不全の関連でフレイルという言葉を聞きますが、
どのような意味でしょうか。

フレイルとは、高齢者が筋力や活動が低下している状態をいい、老化に伴う機能低下を基盤に様々な健康障害に対する脆弱性が亢進している状態を指します。フレイルは低栄養と関係し、心不全による入院のリスクを高めることが知られています。

心不全の関連でサルコペニアという言葉を聞きますが、どのような意味でしょうか。

サルコペニアは、加齢とともに進行性、全身性の骨格筋量および骨格筋力の低下を特徴とし、身体機能低下やQOLの低下をもたらします。
心不全は、サルコペニア、低栄養とともに悪循環を繰り返しながら、フレイルが進行していきます。

水分や塩分の摂り方で注意すべき点はありますか。

心不全患者さんでは、塩分を多くとることにより、口渇感から飲水量が増え、肺うっ血や浮腫が悪化することがあるため、減塩目標を1日6g未満とします。
水分制限には明確なエビデンスはありませんが、水分を多く摂りすぎ、うっ血症状が悪化することがあるため、1日1.5L/日程度に制限したほうがよい場合があります。ただし、高齢者は食欲低下、食事摂取量低下、口喝に対する鈍麻などがあり、逆に脱水になる恐れもあるため注意を要します。

食事ではどのような点に注意したらよいでしょうか。

毎日の食事に「主食」「主菜」「副菜」をそろえて、バランスのよい食事を心がけましょう。 塩分は1日6g未満を目標にしますので、みそ汁の塩分量は1杯1.5g程度ですので、1日1杯までにしましょう。また、麺類は汁まで飲むと8g程度になるので、控えるか、少なくとも汁は残すべきです。
酸味(レモン、ゆず、酢など)、香辛料(からし、わさび、こしょう、カレー粉など)、香味野菜(しそ、みょうがなど)などをうまく利用して、薄味でも美味しく食べられる工夫をしましょう。
加工食品は比較的塩分が多いので、旬の新鮮な素材を選ぶこともよいです。

運動については実際にどのように行うのがよいのでしょうか。

適切な運動は、運動能力が高まることで心臓への負担が軽減し、心不全症状が軽減します。
また、うつ状態やストレス、不安の改善にもつながります。
心不全の原因疾患としてある糖尿病、高血圧、脂質異常症や肥満の改善につながります。
科学的に、心不全による再入院率や死亡率が減少することが明らかにされています6)7)

6) p. 1210.日本循環器学会.心疾患における運動療法に関するガイドライン.Circ J.2002;66(Suppl).
7) Belardinelli R, et al. Circulation. 1999; 99: 1173-1182

ウォーキング、自転車エルゴメーター、軽いエアロビクスなどの有酸素運動がよいとされていて、開始時は週に3~5回、屋外での5~10分程度のウォーキングからはじめて、1か月程度かけて徐々に毎日30~40分程度まで無理のない範囲で伸ばしていくとよいとされています。過度な運動は心不全を悪化させるので注意してください。

できるだけ、専門医の心肺運動負荷試験を受け「運動処方箋」を出してもらい、有酸素運動を行うとともに、処方に基づいた適切なレジスタンストレーニング(スクワット、かかと上げ、もも上げ、ゴムバンドなど)が有効とされています。

レジスタンストレーニングの基本
レジスタンストレーニングとは、筋力をアップするため、筋肉に負荷や抵抗をかけて行う運動のことで、筋力をつけて運動を続けやすくすることに加え、基礎代謝を高めて健康を維持することが目的となります。
・息を止めずに行う(トレーニング中は自然な呼吸をしながら行ってください)
・体を大きく、ゆっくり動かす(反動をつけず、無理のない範囲で大きく動かしてください)
・小さな負荷から始める(運動負荷は、専門医の指示に従って、余裕があると感じる場合も徐々に大きくしていくようにしてください)

アルコールはどの程度、飲んでもよいのでしょうか。

一般的に適量のアルコールを飲んだ場合、血管の拡張による血圧低下や血行促進、リラックス効果、ストレス解消などの効果があります。
適量のアルコールとは、1日あたり日本酒なら1合、ビールなら中びん1本程度です。

喫煙についてはどう考えるべきですか。

タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させるとともに動脈硬化の進行やあらゆる面で心臓に負担をかけるため、絶対に禁煙をしてください!

日常生活の注意点について教えてください。

規則正しい生活と十分な睡眠でストレスをためないように心がけてください。

入浴については、熱い風呂、長風呂、高温サウナを避けてください。
目安は40~41℃、肩までつからず、時間は10分 以内としましょう。
入浴後は安静にして、からだを休めましょう。

急激な温度差は全身の血管を収縮・弛緩させます。血圧の上昇・下降や体温上昇などは、心臓に負担がかかりやすい状態です。お風呂に入る時は 寒くないよう、脱衣所や浴室を暖かくしてから入浴しましょう。また、食事や散歩など活動前後は入浴を控えましょう。また、入浴後は安静にしましょう。

・感染予防
インフルエンザにかかったり風邪をひいたりすると、心臓に負担がかかり、心不全の悪化につながります。そのため、手洗い・うがいを心がけましょう。また、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンを接種することが推奨されています。肺炎予防のためには毎食後の歯磨きも大切です。

・便秘にもご注意
便秘による排便時のいきみは血圧を上げ、心臓に負担をかけてしまいます。できるだけ、毎日決まった時間にトイレに行きましょう。食物繊維の多い食事を摂り、便秘が続くときには、決められた水分量は守りつつ、医師に相談して下剤をもらうのもよいでしょう。

心不全とうつとは関係がありますか。

うつ病は、心不全患者さんの20%以上に認められる8)といわれていて、QOLを低下させ、予後を悪化させる要因にもなります。うつ病で現れる症状としては、頭痛、心悸亢進、痛みなど、さまざまです。

8)p.42.循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合事業「地域におけるかかりつけ医等を中心とした心不全の診療提供体制構築のための研究」研究班.地域のかかりつけ医と多職種のための心不全診療ガイドブック.東京;「地域におけるかかりつけ医等を中心とした心不全の診療提供体制構築のための研究」研究班:2020.

専門医にきくQ&Aの監修
猪又 孝元 先生(新潟大学大学院医歯学総合研究科循環器内科学教授)

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